「100年以上ぶりに新種の猫が見つかった」というニュースが話題になっています。
その名前は、「ティルカヨ(Leopardus tilcayo)」。
南米ボリビアのユンガスという雲霧林に生息する、小型の野生ネコです。
体は一般的なイエネコより小さく、茶色っぽい毛に大きな斑点があるのが特徴です。研究では、頭胴長が約42.5~50.5cm、体重はおよそ1.4~2kgと報告されています。
では、なぜこの猫が「100年以上ぶりの新種」になったのでしょうか?
実は、今回のニュースは「突然、誰も知らない猫が森の中から発見された」という単純な話ではありません。
地元では以前から知られていた猫が、最新の遺伝子解析によって、科学的に別の種だと分かったのです。
この記事では、ティルカヨの特徴だけでなく、なぜ今まで新種と分からなかったのか、名前の由来、何匹いるのか、絶滅の危険はあるのかまで整理します。

ティルカヨとは?どんな猫なの?
ティルカヨは、学名をLeopardus tilcayoという小型の野生ネコです。
生息地として確認されているのは、南米ボリビアのユンガスの雲霧林。
アンデス山脈の東側に広がる、霧や雲に覆われることの多い山地の森林です。
見た目は、一般的なイエネコより小さく、茶色っぽい毛に大きく不規則なロゼット状の斑点があります。
耳は比較的丸く、尾も長めです。
頭胴長は約42.5~50.5cm、尾は約25~26.5cm、体重はおよそ1.4kg前後と報じられています。
見た目だけなら「小さなヤマネコ」に見えますが、ティルカヨが注目されている最大の理由は、その姿ではありません。
遺伝子を調べることで、これまで知られていたタイガーキャット類とは別の種だと確認されたことです。
「100年以上ぶりの新種」ってどういう意味?
今回のニュースで最も気になるのが、ここでしょう。
新しい生物が見つかるニュース自体は珍しくありません。
では、なぜ今回は「100年以上ぶり」なのでしょうか?
実は今回、単純に「新しい猫が森で突然見つかった」という意味ではありません。
研究チームは、以前から知られていた小型ネコの仲間について、DNAを使って詳しく調べました。
その結果、タイガーキャットと呼ばれていたグループには、これまで考えられていた以上に複数の異なる系統が存在することが分かりました。
研究では、38個体の全ゲノムを比較し、その中には博物館に保存されていた8個体の標本も含まれていました。
そして、その解析によって、ボリビアの個体が独立した種として認識できることが示されました。
「100年以上ぶり」というのは、現生のネコ科で新しい種が正式に記載されたのが非常に久しぶり、という意味です。
前回は1923年に記載されたパンパスネコで、今回のティルカヨはそれ以来の新種の現生ネコ科動物とされています。
なぜ今までティルカヨは新種と分からなかった?
ここが今回の記事の大きなポイントです。
ティルカヨがまったく知られていなかったわけではありません。
研究者がこの猫に最初に強い関心を持ったきっかけは、2016年に保護施設へ運び込まれた1匹の「変わった猫」でした。
地元の男性が道路の近くで子猫を見つけ、自宅で飼っていました。
ところが成長していくと、どうも普通のイエネコとは違う。
そのため保護施設に預けられ、研究者の目に留まりました。
当初は、すでに知られていたタイガーキャットの一種だと考えられていました。
しかし、研究者が写真や資料を詳しく調べていくと、斑紋の大きさや形などに違和感が出てきます。
そこで遺伝子解析を進めたところ、単なる個体差では説明できない独立した系統だと分かっていきました。
・小型で人目につきにくい
・野生では観察が難しい
・見た目が近縁種とよく似ている
・生息地域が山地の雲霧林
・写真だけでは種類を区別しにくい
そのため、「存在していたのに、科学的には別の種と認識されていなかった」という状態だったと考えられます。
ティルカヨの名前の由来は?

「ティルカヨ」という名前にも、少し変わった背景があります。
この名前は、研究者が新しく考えたものではありません。
ボリビアのユンガス地域で、地元の人たちが昔からこの猫を「ティルカヨ」と呼んでいたことが由来です。
研究者が「なぜティルカヨと呼ぶのか」と尋ねたところ、
「祖父がそう呼んでいたから」
という趣旨の説明があったと、National Geographicは紹介しています。
つまり、長い間地域に伝わってきた呼び名が、そのまま新種の学名になったわけです。
科学的には2026年に新種と認められた猫ですが、地元の人々にとっては「2026年に突然現れた猫」ではありません。
このギャップが、ティルカヨというニュースの面白いところです。
ティルカヨは他の猫と何が違う?
ティルカヨは「タイガーキャット」と呼ばれる小型ネコの仲間です。
今回の研究が大きな意味を持つのは、ティルカヨ1種を追加しただけではありません。
研究では、これまでひとまとめにされていたタイガーキャット類が、5つの異なる種に分かれることが示されました。
ティルカヨは、近縁種と比べて、
・より大きく不規則な斑紋
・比較的長い尾
・特徴的な尾の模様
・遺伝的な違い
などが確認されています。
さらに遺伝子解析では、ティルカヨの系統が他のタイガーキャット類から約140万年前に分岐したと推定されています。
ティルカヨは絶滅危惧種?何匹いる?

ここは注意が必要です。
現時点では、野生にティルカヨが何匹いるのか、はっきり分かっていません。
研究者が確認できている情報はまだ限られており、野外での観察記録も多くありません。
そのため、今の段階で「絶滅危惧種です」と断定することはできません。
研究チームは今回の発見を国際自然保護連合(IUCN)にも共有しており、今後、種ごとに保全状況が評価されることが期待されています。
一方で、生息地のユンガスの森林は、
森林伐採、農地拡大、火災、鉱業
などの脅威にさらされています。
「新種が見つかった=安心」ではありません。
むしろ、新しく1種として認識されたことで、これまで見えにくかった生息数や生息地の保全を、改めて調べる必要が出てきます。
ティルカヨは夜行性?何を食べる?
まだ分かっていないことが多いのも、今回の新種の特徴です。
研究者によると、カメラトラップなどの情報から夜に活動する可能性があり、小型のネズミなどを食べている可能性も指摘されています。
ただし、これはまだ十分な研究が積み重なった段階ではありません。
繁殖方法や正確な生息数、詳しい食性など、基本的な生態については分からないことが多いとされています。
つまりティルカヨは、
「新種として名前は付いたけれど、生態はまだ謎が多い猫」
なのです。
この点も、今回のニュースが注目されている理由の一つでしょう。
なぜ「100年以上ぶり」がここまで話題なの?
新種の昆虫や小さな生物は、毎年のように報告されています。
それに対して、ネコ科のように比較的大きく、よく知られている動物で、現生の新種が正式に記載されるのは非常に珍しいことです。
今回の研究では、これまで「同じ種類」と考えられていた猫の中に、実は別々の進化の道を歩んできたグループが存在していたことまで分かりました。
ティルカヨの発見は、「新しい猫が1匹増えた」というだけではありません。
私たちが知っている猫の進化や種類の分け方そのものを見直すきっかけになった研究なのです。

まとめ
今回は、100年以上ぶりに正式に記載された新種のネコ、
「ティルカヨ(Leopardus tilcayo)」
について紹介しました。
ティルカヨは、南米ボリビアのユンガス雲霧林に生息する小型の野生ネコです。
大きさはイエネコより小さく、特徴的な斑紋や丸みのある耳を持っています。
そして最大のポイントは、見た目だけではなく遺伝子解析によって、独立した新種であることが確認されたことです。
研究では38個体のゲノムが分析され、タイガーキャット類は5つの異なる種に分かれることも示されました。ティルカヨの系統は、他のタイガーキャット類から約140万年前に分岐したと推定されています。
一方で、
野生に何匹いるのか
詳しい生態はどうなっているのか
どの程度の保全対策が必要なのか
など、まだ分からないことも多く残っています。
ニュースでは「100年以上ぶりの新種猫」と大きく報じられていますが、ティルカヨにとっては、科学の世界でようやく正式な名前を与えられたという出来事でもあります。
これから研究が進めば、
「ティルカヨは野生に何匹いるのか?」
「どんな場所で暮らしているのか?」
「本当に絶滅の危険が高いのか?」
といった疑問にも、少しずつ答えが出てくるかもしれません。
