職場で、こんな光景を見たことはありませんか?
会議で誰よりも的確なデータを出し、 論理的に完璧な「正解」を主張しているのに、 周囲がしらけている。
それどころか、
「あの人は融通がきかない」
「人の心がわからない」
と陰口を叩かれ、 結局その正しい提案は採用されない……。
もし、あなた自身が 「なぜ自分の正しさが理解されないんだ」 と感じているなら、要注意です。
あなたは今、 戦国時代きっての悲劇の天才、石田三成(いしだみつなり)と同じ道を歩んでいるかもしれません。
彼は豊臣政権下で最高の頭脳を持ちながら、 なぜ味方であるはずの人間から憎まれ、 破滅したのか。
今回は、 「仕事ができる人が、組織で嫌われるメカニズム」 を歴史から紐解いていきます。
「正論」という名の暴力

石田三成は、現代で言えば 「超優秀な官僚」や 「冷徹なコンサルタント」のようなタイプでした。
彼の才能が遺憾なく発揮されたのが、 何万という大軍を動かすための計算実務、 「兵站(へいたん)」です。
秀吉からは 「三成に任せれば間違いない」 と絶大な信頼を得ていました。
しかし、彼の潔癖すぎる性格は、 現場の武将たちとの間に 決定的な溝を生んでしまいます。
現場を無視した「完璧な査定」
ある時、三成は 戦場での武将たちの働きを査定する役割を担いました。
命がけで戦っている現場に対し、 彼は安全な後方から、 こんな報告書を出したのです。

「彼らの戦い方は非効率です。 無駄な犠牲が多く、成果に見合っていません」
データとしては、正しかったのかもしれません。
しかし、 血を流して戦う人間に対して、 それをそのまま突きつければどうなるか。
現場叩き上げの武将たちは激怒しました。

「一度も槍を振るったことのない青二才が、 俺たちを数字だけで評価するのか!」
三成は、 「正しいことを言えば、人は動く」 と信じて疑わなかったのです。
しかし組織において、 相手の感情を無視した正論は、 時として「暴力」になります。
関ヶ原の敗因は「根回し不足」にあり
秀吉の死後、徳川家康が動き出すと、 三成は豊臣家を守るために立ち上がります。
彼の主張は、 大義名分としては100%正しいものでした。

「家康はルールを破っている。許すまじ」
しかし、結果は関ヶ原の戦いでの惨敗。
なぜ負けたのか?
それは、彼が「ロジック」に頼りすぎ、 「エモーション(感情)」のケアを怠ったからです。
※正論だけでは人は動かない。では何が必要なのか? 歴史的大ベストセラーであるこの本には、三成が知るべきだった「人間関係の原則」が全て書かれています。三成タイプの人こそ、必読の書です。
「正しいから味方してくれる」という傲慢
三成は、味方につけるべき武将たちへの 「根回し」をほとんどしませんでした。

「正しい目的のために戦うのだから、 当然、協力してくれるだろう」
そう高を括っていたのです。
一方、対戦相手の家康はどうしたか。
彼は三成が批判した武将たちに対し、 徹底的に寄り添いました。

「三成のような頭でっかちが上司だと、 君たち現場は苦労するだろう。 私は君たちの苦労をよく分かっているよ」
家康は、彼らの「感情的な不満」をすくい上げ、 見事に懐柔したのです。
関ヶ原での敗北は、必然でした。
人は「理屈」ではなく、 「この人のために働きたいか」 という感情で動く生き物だからです。
現代に生きる「三成予備軍」への処方箋

三成の失敗は、他人事ではありません。
現代のオフィスにも、 「仕事はできるが人がついてこない三成予備軍」 はたくさんいます。
自分の提案を通し、 組織を動かしたいなら、 以下の2つを意識してください。
- ロジックの前に「共感」を置く
いきなり正論をぶつけない。「その立場なら、そう思うのも無理はないですね」というクッションを挟むだけで、相手は聞く耳を持ちます。 - 泥臭い「根回し」をバカにしない
会議の場だけで決めようとしない。キーマンと個別に話し、感情的なしこりを取り除いておくプロセスこそが、最短ルートです。
まとめ:真の賢さとは「感情を計算に入れること」
石田三成は、計算の天才でした。
しかし、彼の計算式には、 最も重要な変数が抜けていました。
それは、 「人間の感情」という、非合理な変数です。
どれほど論理的に正しい戦略でも、 それを実行するのは「感情」を持った人間です。
「正論は、信頼関係があって初めて機能する」
この事実を理解し、 ロジックとエモーションの両輪を回せる人が、 真のリーダーになれるのです。
歴史は教えてくれます。
頭の良いバカになるな、と。
※今回の話を、圧倒的なリアリティで追体験したいなら司馬遼太郎の『関ヶ原』がおすすめ。 「正義」を信じた三成が、なぜ孤立していくのか。その悲哀と家康の老獪さが、痛いほど分かります。


