
近年、電気自動車(EV)の普及が進む中で、「走行距離課税」、通称「走行税」という新たな税制の議論が注目を集めています。
これは、ガソリン税の税収減少という避けられない問題に対し、政府が将来の道路財源を確保するために検討している仕組みです。
あなたの愛車や日々の運転に直結するこの税制は、いつから日本で導入されるのでしょうか?
そして、なぜ財務大臣がこの課税に言及し、地方や物流業界から懸念の声が上がっているのでしょうか。
本記事では、走行距離課税の背景から導入の最新動向、そして私たちの生活への影響までを、データと事実に基づいて徹底的に解説します。
- そもそも「走行距離課税」とは? 議論の火付け役と切実な背景
- いつから始まる? 日本における導入時期の最新動向と未定の理由
- 地方・物流はどうなる? 公平な税制に向けた山積する課題と国民生活への影響
そもそも「走行距離課税」とは? 議論の火付け役と切実な背景

「走行距離課税」(走行税)とは、自動車の保有期間や排気量ではなく、実際に走行した距離に応じて課税する新たな自動車関連税の仕組みです。
議論の火付け役は鈴木財務大臣

この「走行距離課税」の議論が本格的に注目を集め、国民の間に広がる直接的なきっかけとなったのは、2022年10月の国会での答弁です。
当時の鈴木俊一財務大臣(現:財務・金融担当大臣)は、立憲民主党議員の質問に対し、将来的な道路財源の確保について以下のように発言しました。
「(道路財源を)確保していく上では、電動車を含めて走行距離に応じた課税も一つの考え方になる」
この答弁以降、「走行距離課税」は政府・与党の検討課題として広く認識されるようになりました。
導入が検討される切実な背景
現行の道路財源の多くは、ガソリン代に含まれる「ガソリン税」などの燃料課税に頼っています。
しかし、以下の理由から税収の維持が困難になりつつあります。
政府が2035年までに新車販売をすべて電動車にする目標を掲げる中、ガソリンを消費しないEVが増えるほどガソリン税収は減少します。
ガソリン車の燃費向上も、結果として走行距離当たりの燃料消費量を減らし、税収を減少させる要因となっています。
走行距離課税は、道路インフラを維持・整備するための財源が枯渇する前に、「EV時代の新たな道路財源」を確保するために議論されているのです。
いつから始まる? 日本における導入時期の最新動向と未定の理由

国民が最も知りたい「いつから」という点について、結論として、
現時点(2025年11月)で具体的な開始時期は決まっていません。
導入時期が未定である主な理由
走行距離課税の導入には、単なる税制改正以上の複雑な課題が山積しており、慎重な検討が求められています。
| 課題 | 導入の難しさ |
|---|---|
| 技術的な課題 | 全ての車両に正確な走行距離を把握し、不正を防ぐための専用デバイスやシステムを導入・維持するコストと方法。 |
| 制度的な課題 | 地方在住者など長距離走行が必須の人々への配慮(特例措置など)の必要性や、既存の自動車税制との整理。 |
| 国民理解 | プライバシー(位置情報などの把握)への懸念を払拭し、「公平性」への国民の合意を得るのが難しい。 |
海外の事例
アメリカのオレゴン州などでは、既にガソリン税の代替として走行距離課税(Road Usage Charge: RUC)を試験的または任意で導入している事例がありますが、日本での全面導入にはまだ多くの検討が必要です。
地方・物流はどうなる? 公平な税制に向けた山積する課題と国民生活への影響

走行距離課税は「走った分だけ負担する」という点で公平性が高いと期待される反面、特定の層に負担が集中する可能性があることが最大の懸念点です。
懸念される負担増
公共交通機関が少なく、通勤や生活に必要な移動で長距離走行が避けられない地方のドライバーが、都市部と比べて相対的に大きな負担を強いられる可能性があります。
長距離トラックなど運送業界の走行距離は膨大です。
課税が導入されれば、そのコストは運賃に上乗せされ、最終的には消費者が購入する商品の価格に転嫁される(物価上昇の一因となる)ことが懸念されています。
導入のメリット
それでも走行距離課税が将来的に必要とされるのは、以下のメリットがあるからです。
- 税負担の公平性の担保
ガソリン車、ハイブリッド車、EVといった車種や燃費によらず、道路の利用者全員から公平に道路整備費用を徴収できる。 - 持続可能な財源:
化石燃料への依存から脱却し、電動車時代においても安定した道路インフラの維持・整備が可能になる。
まとめ
「走行距離課税」は、EV化が進む日本の税収構造が抱える構造的な問題を解決するための、将来的な選択肢として議論されています。
- 「いつから」:現時点では具体的な導入時期は未定です(2025年11月現在)。
- 誰が言い出した?:2022年10月の国会における鈴木財務大臣(当時)の答弁が、議論を本格化させる契機となりました。
その導入は、地方の負担増やプライバシー侵害の懸念といった大きな課題を伴うため、今後も政府の税制調査会などでの慎重な議論が続く見通しです。
この新たな税制は、単なる車の税金ではなく、日本の交通インフラと国民生活のあり方を大きく左右する重要なテーマです。
今後の動向を注意深く見守っていく必要があります。


